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ドラクエ3に学ぶ新米起業家のレベルの上げ方5選(後半)

新米起業家にとって何が一番重要なのか。
それはなにより「自身のレベルを上げる事」に尽きる。とにかく我々はいまだ経験値のないひよっこなのだ。なんとしてでもレベルをあげなければならない。
「レベル上げ」と言えば、「ドラクエ(ドラゴンクエスト)」である。これは紛れもない事実だ。
前回に引き続き、ドラゴンクエストシリーズ最高傑作である「ドラクエ3」から、レベル上げ法を学び、我々起業家がなすべき経験値の溜め方を考えていきたい。

前回の記事はこちら

レベル上げ3 レア案件を狩る。

ドラクエ愛好家なら、真っ先に思いつく、安直だがもっとも信頼性の高いレベル上げ法が、「メタルスライム」「はぐれメタル」といったレアモンスターの殺害だ。
彼らは呪文が全く効かず、打撃を選択しても1ポイントしかダメージが与えられない上、よく逃げ出すので、工夫しないと殲滅することができない。
しかし、メタル系モンスターを死に至らしめることが出来たら、莫大な量の経験値がもらえるという按配である。

具体的にメタル系への人生の幕の下させ方だが、
・1点ずつ粘り強くダメージを与えて倒す
・「かいしんのいちげき」を出す(「ぶとうか」をメンバーにいれるとよい)
・「どくばり」による一撃死を出す(どくばりは「まほうつかい」のみ装備化)
・「メダパニ(混乱魔法)」を他のモンスターに使ってメタル系を攻撃させる
・「ドラゴラム(竜化魔法)」を使って次のターンの炎で攻撃
・「ゾンビキラーバグ」を誘発させて倒す(ガルナ塔のメタルスライムのみ)
・「やいばのよろい」の反射効果を狙う
・「はやぶさのけん」による二回攻撃を有効活用する

といった手段が常套である。
一番のおすすめは「メダパニ」作戦である。「ごうけつぐま」と共に「メタルスライム」が出やすい「ジパングのどうくつ」や、「トロル」共に出現しがちな「はぐれメタル」が出やすい「ネクロゴンド地方」では特に有効だ。
そうやってお前らは、メタル系モンスターを、殺して、駆除して、昇天させ、世に去らせて、神の御許に送り、ヒナギクいっぱいのお墓におねんねさせて、自身の経験の糧にしていけばいいと思う。

これを起業で置き換えるのならば、「突発的に出現したレアなニーズを、誰よりも早く仕事にする事」といった事になるだろうか。
具体例を挙げるのは難しいが、例えば「健康をテーマにしたテレビ番組で突然取り上げられた食品」や、「一発屋のお笑い芸人のギャグ」、「謎の高視聴率を誇ったテレビドラマで取り上げられた題材の周辺にある商材」といったところに、「はぐれメタル」は存在する。
その際、通常業務で使われている手法は捨て、普段は取らない戦法で戦うべきだろう。そうしたビジネンチャンスは、手癖で挑まず、その場のひらめきでモノにしていくのが重要だからだ。さらに重要なのは、そんなイレギュラーな商機は逃して当たり前なのだから、仕事にならなかったといっていちいちイラついたり、悲しんだり、嘆いたり、隣で正座してゲームを見ている弟をぶん殴ったりしない事だ。

レベル上げ法 レベル上げを弟に頼む。

ドラクエのレベル上げは、ともすれば時間もかかるうえ単調な作業になりがちだ。そんなときは、隣で先ほどから正座してゲームをやりたそうにしてこちらを見ている弟にレベルアップの作業を頼むのがいいだろう。
そもそも、ファミコンは1日一時間である。
24時間中、ファミコンができるのはたった一時間だけだ。しかし、弟を活用できるなら、それが2時間になる。単純に2倍の効率でレベル上げが可能なのだ(ただし母親にちゃんと確認をとらないと「結局2時間やってるじゃない!」と叱られてファミコンのACアダプターをはさみで切られてしまうだろう)。

だが、弟にレベルアップを頼む時は、以下の事を噛んで含めるように注意喚起をしなければならないだろう

・じゅもんを使うな
弟は馬鹿なので、普通の敵にも呪文を使ってしまうので、「普通の敵に呪文を使うのはもったいないから回復以外は絶対にやめろ」と言うべき。そうでないと、すぐにMPをゼロにして回復もリレミトもできず全滅させちゃう。弟は馬鹿なので。

・物語をすすめるな
 弟は馬鹿なので物語をすすめがちだが、この「ぼうけんのしょ」は俺のものなんだから、弟は俺がクリアした後「ぼうけんのしょ3」でやればいい。ちなみに「ぼうけんのしょ2」はバックアップでコピーしてある奴だから使うな。

・ゲームをやめる時する時ちゃんとリセットを推しながら電源を切れ
弟のせいで「ぼうけんのしょ」が何回も消えている。弟は馬鹿だからファミコンの電源をすぐにポチッとするから「ぼうけんのしょ」が消える。本当ふざけんな。本当にふさげんな。

と、このようにきちんと弟に指導と監督をしないと、ゲームのデータそのものが破損しかねない。ちゃんと弟にドラクエをやらせる場合は、「ドラクエやっていい券」を紙に書いて発行し、裏に弟にも読めるよう注意書きをひらがなで書いておくといいかもしれない。

さてこれを現実の起業に当てはめると、「自分以外の人間に自分が普段やっている案件を任せる」事が、自身のレベルアップに大いにつながるといえる。ドラクエ3でいえばレベル32くらいのころになれば、起業した事業も軌道に乗ってくる頃だろう。と同時に、ドラクエ3でもこの辺りからレベルが上がりにくくなっている。
こうした時に、別な人間に仕事のかじ取りを任せる。その際の引継ぎのマニュアルを作成していく過程で、自分が普段やっていた仕事を見直すことにもなるだろう。

必要なとき必要なだけ仕事を頼めるオンラインアシスタント【フジ子さん】

こういう作業は、弟よりもちゃんと仕事として対応してくれる他人の方が信頼できる。

レベル上げ5 もはやレベル上げなんかしない

そもそも、ドラクエ3において、なぜレベルを上げるのかといえば、それは「能力値を上昇させるため」である。
ドラクエも後半になれば、レベルアップもしにくくなり、またゲームシステム上能力値の上昇も一定の制限がかかる。レベルが上がっても「うんのよさが1あがった」だけなんていうこともザラだ。こうなると、たとえ経験値を積みレベルが上がったからといって、能力値が上がるわけでもなく、強くなったということにはならない。

ドラクエ3では「たね」アイテムがある。「ちからのたね」「スタミナのたね」「かしこさのたね」といったアイテムで能力を直接上げれば、それはレベルアップしたこととほぼ同義といっていいだろう。「たね」を一つ使用すると、だいたい1~3ポイントほどステータスが上昇する。

そこで自身を強くしたいならば、レベル上げにこだわるのではなく、こうした各種「たね」を集めて使用するのがよい。
通常ゲームで手に入れられる(拾える)種の総数は以下の通りだ。

すばやさのたね……4
ちからのたね……6
いのちのきのみ……10
かしこさのたね……5
スタミナのたね……4
ラックのたね……1

これら種アイテムは、モンスターの落とす宝箱からも入手できる。まず基本で拾える「たね」をいかに使うか、そして、「たね」を落とすモンスターをひたすら狩り、能力数値の上限値である「255」(HP・MPは表示上999。最大で65536であるらしい)を目指すとよい。

参考までに、例えばレベル45の「ゆうしゃ」の平均「ちから」は大体150程度である。
通常の宝箱から手に入る「ちからのたね」6つをすべて「ゆうしゃ」に使うなら最大で+18上昇して168となる。
255には87足りないので、最低でも残り29個の「ちからのたね」を「ゴートドン」や「ごうけつぐま」を殺しまくり手に入れる必要がある
(最も入手確率の高い「ゴートドン」からの入手率は1/64。最低でも1856体のゴートドンを殺すと、「ゆうしゃ」のちからはカンストにできるかもしれない計算となる)

これを現実の起業に当てはめてみると、「もう自分のレベルアップなんかしなくてもいい」という事になるだろうか。

もういい。もういいのだ。
レベルを上げて、ステータスをあげて、それでなんだというのだ。
各種資格を取った、人脈をとんでもなく広げた、英会話スキルをビジネス会話レベルまで高めた……だから、なんなのだ。
現実なんて、所詮、現実に過ぎないじゃないか。現実をどんなに頑張っても、ドラクエ3の攻略には何の役にも立たない。

能力をマックスまで上げた「ゆうしゃ」でドラクエ3をやったことはあるだろうか。あれは、すさまじい。
まず、どんな攻撃を受けても、HPの表示が下がらない。なんてったって六万ポイント以上あるのだ。ラスボスであっても、防御力を最高に高めた状態ではせいぜい2、3ポイント程度しかダメージは減らない。ラスボスに「バイキルト(攻撃力上昇)」を使ってあげてわざとダメージを食らっても、死ぬ気配がない。

ふと、思うはずだ。俺は、何のために起業したのか。
何のために、冒険の旅に出たのか。一番楽しかったのって、やっとアリアハン大陸を抜けてロマリアに到達して、1500Gではがねのつるぎを買えた所だったんじゃなかったか。

『グレート生活アドベンチャー』(前田司郎・新潮文庫)

物語後半、ゲームのレベルを上げ過ぎてしまった主人公が、最後の魔王と戦っている最中に魔王を回復させたり、途中で武器を最弱の武器の「ひのきのぼう」に持ち替えて決着をひきのばしたりする。そんな傑作小説。

そうした初期衝動を超えて以降、できる事、やるべきことが拡大して、タスクに追われ、気がつけばもう50代だ。
「50代になったら、もうレベルアップはいい」
それよりも重要なのは、ゲームに熱くなっていたころ、いつもぶん殴っていてた弟に、心の底から謝罪をする事ではないだろうか。弟、本当に申し訳なかった。本当に本当に、申し訳なかった。

50代になったら、謝罪をする。
50代になったあなたはもはや新米ではない。ちゃんと他人に謝れる、ベテラン経営者なのだ。

山本健介

脚本家、演出家。埼玉県春日部市出身。早稲田大学第二文学部卒。2007年演劇ユニット「The end of companyジエン社」を旗揚げ。
以降ジエン社の全作品の脚本と演出を務める。2015年『30光年先のガールズエンド』にて第60回岸田國士戯曲賞最終候補にノミネート。
舞台作品以外にも、映画『スマグラー』『SHORT PEACE』、テレビドラマ『東野圭吾ミステリーズ』などの脚本を手がける。
http://elegirl.net/jiensha/

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